薬品の本当の怖さを体験した
宮城盛彦さんの平飼い自然卵
■効率重視の最先端技術の養鶏が本業だった
「あの頃は、風邪を引きやすくて治りにくいし、体調も悪くて『いつも機嫌が悪くて怖かった』って言われました」と話すみやぎ農園(代表・宮城朝子さん/沖縄県南城市)の宮城盛彦さん。
日本大学獣医学部を卒業した後、効率ばかりの最先端技術の養鶏が本業でした。でも、いわゆる「薬漬け養鶏」なので、不自然な上にとても鶏に無理をさせています。だから病気になりやすく、病気になるとまた薬を使うといういたちごっこの繰り返し。
どんな薬も効かない病気が一気に広まって全滅し、途方にくれたこともあったそうです。
■薬も効かないのに自然の力で蘇った鶏の衝撃
病気で弱って動けなくなった鶏の処分が間に合わなかった時、裏の地べたにカゴをかぶせて野ざらしで放っておいたことがありました。最後の力をふり絞って周囲の土や草をついばんでいた鶏が、驚いたことに少しずつ回復してきました。そのままにしておいたら、数日後にはすっかり元気になったのです。
「自然の中にあるものが『生命力』を蘇らせたんだ! これが答えだ!」と宮城さんは気づいたのです。
これが、それまでの養鶏法から180度方向転換して、抗生物質や薬を一切使わない平飼い自然養鶏を本格的に始めるきっかけとなりました。
■森と繋がった生態系、ニオイが全くない驚きの鶏舎
卵がコロコロ転がって集めやすいようにした産卵場所は鶏たちに不評で産んでくれないなど、平飼い養鶏を始めたころは、最先端技術の常識が通用しない自然養鶏ならではの苦労の連続でした。
食べ残しや糞なども毎日そうじして外へ出していました。それが常識だからでした。ところが、宮城さんが高熱を出してしまい何日もそうじができなかった間に、すでに鶏舎に住み着いていた森の微生物が、きれいに食べ残しや鶏糞を土に還していたのです。それには衝撃を受けた宮城さん。「人間は余計なことをし過ぎているのかもしれない」と気づきました。
鶏舎は森とつながって生態系を作り、土着の微生物が腐葉土のように鶏舎の環境を浄化し、森の中と同じように驚くほどニオイがない衛生的な環境を作っていたのです。
■薬漬け養鶏をやめたら体調まで良くなった
自然に教えられ気づかされることの連続だった宮城さん。手間のかかる青草やりや手作業での卵集めをしているのも鶏にとって何がいいかを考えたからなのです。今の養鶏法になってから、宮城さんに思わぬ変化もありました。以前に比べてとても健康になったというのです。イライラすることもなくなり、どんなに忙しくても笑顔で仕事ができるようになりました。